#音のこだわりを全て 【ソニーフラッグシップモデル ブロガー限定先行体験会】レポートその4:MDR-Z1R開発秘話
【ソニーフラッグシップモデル ブロガー限定先行体験会】に参加させて頂き、ヘッドホンのフラッグシップモデルMDR-Z1R、そしてフラッグシップウォークマンのNW-WM1AとNW-WM1Zをハンズオンさせて頂きましたが、開発者の方からの説明に入ります。
SONY MDR-Z1R開発担当の潮見様、尾崎様より
空気感を再現する為の70mm HD大口径ドライバユニット
現場では立体的に音を体験している。周波数帯域外の音も身体で感じている。
ダイナミックレンジも大切、大きい音のみならず小さい音も大切である。
ヘッドホンのドライバで平面波として再現することで、耳元で現場の音場感が再現出来ると考えている。
計測した結果人の耳のサイズは平均65mmということが判った。
よって65mmよりも大きなサイズの振動板を耳元で使うことが出来れば平面波を伝えることが出来ると考えた。
この耳型はSONYのデザイナーの方の耳を取ったということです。シリコン素材で出来ており触ってみると皮膚のように柔らかく(しかも色もピンクで)まるでホンモノの耳ようでした(^^;
マグネットはネオジウムだが半円ごとに分割する通常とは異なる製造方法を使った。
振動板は30ミクロンという極薄のマグネシウムで作った。
マグネシウム素材は伸びが悪く、このような薄い振動板の実現は難しい。10年以上かけてようやく実現した。
このマグシウムドームによって120khzまで再生することに成功した。
振動板はボイスコイルを直付けしている。
エッジには複合素材のアルミニウムLCPを採用。この素材は内部損失が大きく素材自体が固有の音を持たない。
フィボナッチ数列を採用したドライバグリルのデザイン
プロテクタのデザインはヒボナッチ数列を採用した。
自然界の現象に近いパターンなので音にも良い効果がある筈である。
例としてひまわりの種の並びや、樹木に葉っぱがついているパターンがこの数列となる。
ひまわりの種は限られた面積の中で均等で最も大きな種を配列出来ることがヒントになった。
MDR-Z7よりも細いグリルを使うことで均等に空気が抜けるようにし、広域まで変なクセが無いように追い込みことが出来た。
実はMDR-Z7と開口率は同じである。その太い桟が音をじゃましていた。
こちらはMDR-Z1Rのドライバユニット+フィボナッチパターングリル
こちらはMDR-Z7のドライバユニット
レゾナンスフリーハウジング
ヘッドホンには必ず開口部が必要である。これまでのMDRZ7は密閉型ハウジングだが、開口部を持っていた。
MDR-Z1Rではレゾナンスフリーと呼ぶ面全体から同じ量の空気を抜く構造とした。
こちらが前モデルMDRZ7のハウジング外観
MDR-Z1Rのハウジングカバーにはスレンレスの網素材を採用。
この網目素材にも徹底的に拘った結果、編み物のパターンについても、かなり詳しくなった、笑
レゾナンスフリーの効果を体験
貝殻を耳あてるとサーという音が発生する。
従来のハウジングではヘッドホンでも同様のことが発生していると予測した。
レゾナンスフリーハウジングでこの空間の共鳴を防いだことでこの現象を無くすることが出来た。
ここでMDR-Z1Rの形状で密閉された状態の実験用のハウジングが配られました。これを耳に当てるとたしかにゴーという音が聞こえて来ます。
この音は外部からの騒音の反響、そして人間の血流や筋肉の動きが内部でも反響してあの音が出ているということです。
そしてこちらはMDR-Z1Rのレゾナンスフリーハウジングが配られ両耳に当ててみました。
すると無響室に入った時の感覚を思い出しました。
無響室のような環境に入ると耳から入ってくる壁等からの反射音が無いことで、距離感を失ってしまうらしく自分がどこに居るのか判らない感覚になります。
このハウジングを耳に当てた時とそれに近い感覚を思い出してしまいました。
レゾナンスフリーを実現する音響レジスタへの拘り
音響レジスタの形状も特徴的で中心が少しズレている。これで太鼓のように動きやすくなることを防いでいる。
この音響レジスタを実現する為いろいろな材料を探したが。カナダ産針葉樹を採用した。
この素材は繊維が長く、密度が高く、強度も高い。
製造には雪解け水を使っている。温度が一定でPHが安定している為。
またこれまでに無い素材の為通気率を確認する測定器まで作成した。
ニューヨークの音楽スタジオでのチューニング
ニューヨークにあるSONYミュージックのマスタリングスタジオに行きレコーディングエンジニアと一緒に開発を行なった。
その場で分解し再び組み立て直しながら、エンジニアと自分の耳を頼りに音を合わせ込んで行く作業を繰り返した。
音場を再現する為には高音も大事だが低音の方が大切な要素であることが判った。
広い部屋ほど共鳴が低い周波数を持っている、低い音もしっかり再現出来ないと大きなコンサートホールの再現が出来ない。
夜には上司の自腹でJazzクラブ通わせてもらい、そこでも勉強しながら日々の作業を進めて行った。
装着性への徹底的なこだわり
ヘッドバンド部には伸び縮みが良く柔らかい素材として眼鏡にもつかわているβチタンを使っている。
音を聞くためには正しい装着状態にすることが必要である。
イヤパッドを設計する際に、人の頭をレーザスキャンして平均化して形状を決定して行った。
その結果馬割れた曲面が強い方が理想的だだったが、実はそうでは無い方が自然であることが判った。
最新の技術を使ったとしても最終的には人の感触の方が重要である。
手前が製品版のイヤーパッド、奥が計測結果をそのまま反映した形状の試作イヤーパッド。
謹製ヘッドホンケースにもこだわりが
付属ケースもしっかりしたものを準備した。
ただのケースでは無く、本体と同じレベルで手を掛けて設計している。
製造へのこだわり
製造はMDR CD900と同じようなプロ用機器を作っている工場で、製造現場から厳しいフィードバックもあった。
熟練工の方が多くいらっしゃる工場で、現場の品質管理が厳しい。
ということで、MDR-Z1Rは正にフラッグシップヘッドホンとして、隅々にSONYの開発者の拘りが詰められたモデルということを理解しました。
特にハンズオンした時にもすぐに感じた静寂性は、ドライバを硬いシェルで密閉するのでは無く、反響を徹底的に排除するレゾナンスフリー構造によって実現されていることが判りました。
また、外見は大型にも関わらず、軽い装着感を実現しているのもこのレゾナンスフリー構造のおかげてあることも判りました。
このようにソニーが10年掛けて開発したフラッグシップヘッドホンは皆さんもソニーショールームで体験してみられることをオススメいたします。
銀座の新ソニーショールームにはMDR-Z1Rの内部構造をこのように構造を展示されています。
ヘッドホンで平面波とすることで、耳元で現場の音場感が再現出来る
と言うのは正しいと思う。
私は平面波ヘッドホンで現場の音場感だけでなく、前方距離感まで再現することに成功した。
ただし、録音条件が人の前方認識に一致した場合に可能となる。
多くのクラシック録音音源で、前方に楽器の音が浮かび上がり録音会場の反響音が自宅の部屋に響き渡る場を再現できました。
本来の楽器の音色と奥行きある響きを再現するには、真の前方定位が不可欠であると気付きました。
これが実現できないのは、重大な欠陥があるからだろうと思う。
更なる、人の聴覚の研究と合わせた改良を期待します。